2011/05/28
 

　水曜日の昼２時頃、放送局のえらいさん２名がわざわざボクの事務所くんだりまでお越しになり、４時間も会議して、コーヒー３杯ずつとお茶のボトルを１リットル空にしてお帰りになった。

「我々はなぜＷＩＮ５の１億４千万を獲り逃がしたか」。これが議題である。ボクを加えたこの３人は「チームＫ」。あらゆる戦術を駆使して億万長者入りを目指すべく結成された、国際秘密馬券結社なのである。

　先週は４つ当てたが、最後のオークスで１～３番人気の３頭に絞って撃沈。「お前が守りに入ってどないすんねん」とまずボクが罵倒され、「１クラ目は⑬１頭鉄板で合意したのに、１番人気を押さえへんかと夜中に弱気な電話かけてきたんは誰ですか？」とボクが反撃。激論と大反省に４時間費やしたわけだ（隣室で弟子たちが仕事してるのに）。

　ＷＩＮ５は、懸命に堅実に生きてきたオッサンが、いろんな意味で自分を見失う馬券である。これが会議の結論。

　クイズの問題になるような話題だが、「震災後、一番活気が出た産業って何」？　正解は「結婚仲介業」だ。女性会員が激増しており、カップルもガンガン成立しているらしい。地震の揺れなどで怖くなり、いざという時、男に守ってほしいと思う女性が増えたのだろう。

　分かるのだ。ボクだって不安な彼女たちの肩をがっしり抱きしめてあげたい。そのためには、もう結婚は無理だが、２組ぐらい同棲を引き受けてあげても…いやアカン。嫁ハン読んでるかも。

　ボクの業界なんて男勝りのやり手オンナばっかりだが、やっぱり結婚はしたいらしい。彼女たちは不安というより、自分のことを誰かに心配させてやりたいんだと思う。もう、男なら何でもいいから紹介してよとボクに迫ってくる。

　馬券を買う奴だけはやめとけよと助言すると、でも、週末は競馬場に行ってくれるから楽でいいかもよと彼女たちは口を揃える。たとえ国難の時代でも、オンナは二枚ぐらい上である。

　今週は浜岡原発の停止作業が始まった。当欄で設計ミスを指摘のうえ即刻停止せよと指導したわけだが、菅総理も参考にしたものと思う。感心、感心。

　それにしても、この時期に「菅降ろし」とか、この国の政治家はアホである。ろくに協力せん野党も頭にくるが、無能な総理を選んだ以上、皆で助けるのが当然なのに、身内の足を引っ張る民主党には完全に頭にきた。彼らはただの烏合の衆であることが判明したわけだ。今回、批判ばかりして復興を遅らせた政治家には後々、大変なしっぺ返しが来るだろう。被災者はちゃんと見てるぞ。

　ところで、昨日、電気店に行ったら節電商品のセールが行われていて、売り上げ上々だとか。節電できる商品が作れるんなら、最初から作っておけと言いたい。そんなのでひと儲けを企むメーカーもメーカーなら、新商品にすぐ踊らされる消費者も消費者である。

　新商品のＷＩＮ５に踊らされ、早くもえらい目に遭ってるボクが言うのも何だけど。

　ＷＩＮ５は、かなり心臓に悪い馬券であることが判明した。

　先週は弟子と組んで７人で５４０点張り。長時間に及ぶ作戦会議が功を奏し、４発連続で当たった。４発目は弱メンが集まったスイートピーＳだったが、人気サイドを押さえて的中。予想段階ではこれが一番難解だったことから、この時点で弟子から「峠は越えましたっ」といった電話がガンガン入る。
「怖ぁて見てられん」
「ほんまですわ。そらそうと、払い戻し金はどう分配します？」
「当たってから悩めっ」
「でも天皇賞、５点張りですよ。どう考えても頂きでしょう」
「ヒルノダムールが勝ったらどないすんねんな」
「そいつが勝ちます？　よりにもよって？　イジメですやん」

　そいつが勝ったのである。よりにもよって。イジメだ。エイシンは押さえていたのである。そこまで我々の日頃の行いが悪いかと言われれば、まあ、その通りだ。悪いのである。ならば仕方あるまい。

　いきなり、ＷＩＮ５で仲間が81万当てよった。穴馬は１頭も来ておらず、これで81万なら気合も入ろうというものだ。先週は競馬のない国に移住したいと書いたが、早くも撤回する。買います、これ。

　この馬券の何がいいって、馬券師のガチンコ勝負だということだ。レースを選べないことから、土俵が同じなのである。午前中だけ参戦したり、重賞だけチョロッと買って勝ち逃げしたりできない。規定打席に達しなければならんのだ。

　それにしても一発目、ボクは共同買いで４つ当て、最初の橘Ｓをハズシてパァである。しかも、だ。２着馬のミヤジエムジェイ（11番人気）は買っていたのである。この馬の単が35倍で、勝ち馬が３．５倍だったことから、入れ替わっていたら単純計算で８１０万ついたと思う。立ち直れん馬券だと聞いてはいたが、こうまでいきなり立ち直れんとは…。

　とまあ、毎週こんなボヤキを書くことになりそうで、コラムのネタには困らんものと思う。

　今週からＷＩＮ５という新馬券が発売される。全場のうち一番遅い時間に行われるメインレースをフィニッシュに、５鞍連続で勝ち馬を当てろという無茶な馬券である。

　先週までの結果を検証すると、人気サイドの馬が概ね勝ったが、狂ったのは必ず小倉の10Ｒであった。特にローカルでキツイ馬から入るボクにとって、それはあまり苦にならない。問題は人気サイドの取捨で、裏目に出たら立ち直れん。また、４鞍当てながら最後にハナ差負けを喫したら当然立ち直れんし、逃した配当がそれこそ億単位だったりしたら、一生立ち直れんだろう。

　要するに、立ち直れん馬券なのである。自分の趣味で、毎週、苦痛を味わうことになるわけだ。じゃからと言うて、買わんわけにはいかん。どこぞの誰かに２億持っていかれるのはケタクソ悪いからである。結論として、競馬のない国に移住するしかなかろう。ずっと思ってきたことだが、いよいよ真剣に考える時期が来たようだ。

　「死に金」という言葉がある。辞書を引くと「無駄に使って役に立っていない金銭」とある。たとえば、つまらん芝居を見せられた観劇料とか、タクシーで降車寸前にチロッと上がりやがった80円とか、横に座りよったホステスがブサイクだった時の飲み代などである。

　対して、生き金（活き金と表記すべきか）があるとすれば、それは使って気分がよくなる金だ。女の子が感激してくれた食事代とか、喜んでくれたプレゼント代とか（結局、口説く金かいっ）。

　ボクはこの使い分けをかなり意識する。ケチではないのだ。死に金を使いたくないだけである。

　レンホーの仕分けが分かりやすかったが、税金の多くは死に金だ。しかし今回、復興税が新設されれば、それは間違いなく活き金である。政府は早く検討に入るように。

　先週の桜花賞は、逃げた①から大勝負して心臓がバコバコしたので、活き金。尺度は「勝ち負け」ではないのだ。そうでないと、競馬なんかやってられんのである。

　大地震以来モヤモヤしてたんだが、気晴らしにと釣りに誘われ、久々に串本を訪れた。養殖イカダの外側に小舟を掛けて糸を垂らす優雅な遊びである。

　報道は少ないが、串本でも津波の被害を受けてイカダの半分が消失。出荷直前のマダイが全部アウトで、大損害とか。見慣れた光景が様変わりしていて、余計モヤモヤしてきた。

　このあたりは、南海地震が起こると津波が来るまでわずか６分だとか。どこへ避難するべきか、船長と真剣に協議する。

　12時間頑張り、イカダの周囲を回遊する天然マダイを４尾ゲット。最高は50センチで、強烈な引きを味わい、腕の痛みに耐えてにぎりずしを作って食べ、死ぬほどうまかった。「あけみ丸」のホームページに、魚を並べてガッツポーズするボクの写真が出ているので笑ってほしい。

　競馬の方は長い間ガッツポーズをしていない。荒れる桜花賞をガツンといわして、久々に払い戻し窓口を訪れてみたいと思う。

　自分も災害や事故に遭ったり意識を失った時に備え、ＱＱノートなるものを作成した。救急に加え、クイック＆クエスチョンの意味もあり、なかなかのもんだ。ゲン悪いとか言わずに皆さんもどうぞ。家族のためだ。

　中身は、まずは本紙を含めて連載が３本あるので、各担当者のケータイ番号や放送局窓口の連絡先一覧。他に業務書類の内容、車の処置や、口座にパソコンの暗証、貸借金や隠し財産、隠し子の有無、変な会員になってないかなど、やましいことはほとんどないので、すべて書いた。

　絶対に忘れてはならんのが的中未換金馬券の保管場所だが、読んだ嫁ハンが「当たり馬券なんかまずないねんから、この項目は削除したら」だと。あまりのキツいお言葉に早速、意識を失いそうになったのである。

　原発事故が終息しないどころか、悪化の一途だ。信じられん。

　ボクは18年前、大津波直後の奥尻島を取材した時、ズンベラボウになった港町を目の当たりにして震えた。果たして福島原発の設計者たちは、奥尻を視察したことがあるのだろうか。特に、制御室を海側に建てていたのには驚く。

　浜岡原発の写真を見て恐ろしくなった。浜辺からなだらかな直線上に原発が建つ。今回の半分の津波でもイチコロであろう。同じことになる前に止めなさい。知らんよ。

　「想定外」と言えば何でも許されると思っている人たちがいる。今回、誰がどんな発言をするかテレビで厳重に見張っているが、東電はじめ「想定が甘かった」と謝罪した関係者は皆無である。

　自分は大穴党でよかった。超人気薄の馬でも突っ込む「想定」ができるので、総流しで大万馬券を引っ掛けることがあるからだ。だが「多点張りで負けたら大損する」という想定ができないのが玉にキズである。いや、致命傷かも。