まだ娘が幼い頃、家族で気仙沼を旅した。地元で「ホシ」と呼ばれるサメの心臓が珍味で、カニなど海の幸があふれて最高だった。
漁港でカツオ漁船の水揚げを見ていると、船長が「娘さんに食べさせてやれっ」と丸々太ったカツオを3本、ボクに放り投げた。礼を言い、入れ物を探していると、おかあさんたちが箱をくれて、ついでにホタテを詰めて、梱包までしてくれた。ボクは旅みやげを、港だけでタダで調達してしまったのである。
太っ腹船長、やさしかったおかあさんたち…。その笑顔がまだ脳裏にあり、被災されたことを思うと泣けてくる。近く訪れ、何かお役に立てればと思っている。
はっきり言って、バクチを打ってる場合ではない。こうなりゃもう、無茶苦茶買って思い切り金をすり、吸い上げられた金を被災地で使ってもらうしかなかろう。共感いただける方は、ただ今より合言葉を発表するので気合一発、ご発声よろしく。「さあ、今日も負けるぞっ」。
木曜日、娘と井上陽水のコンサートへ。7回目だが、今回は1月の2日にチケットを押さえたのが功を奏し、実に最前列のほぼ真ん中だ。陽水との距離、約3m。こんな位置から彼の声を聴くことは、二度とないだろう。
♪窓の外にはりんご売り。声を枯らしてりんご売り。きっと誰かがふざけて、りんご売りの真似をしているだけなんだろう…彼自作の名曲「氷の世界」の導入部だ。狂人である。
他にも名曲は山ほどあるが、どの詩からも、何物にも囚われない、奇抜で突飛で奔放な発想がほとばしる。そんな狂気に魅せられ、物書きを生業とする自分は、彼にどこまで近づけるかと頑張ってきた。周囲に狂人と言われて嬉しかったことも何度かはある。しかし、とても勝てん。
そこで、競馬の分野で狂人になれたらと始めたのが当コラムだ。予想の「想」は発想の「想」である。これからも狂人予想で突っ走るので、くれぐれも、まともな方は参考になさらぬよう。
2011/02/26
ニュージーランドの地震で気が重い。若くて志の高い人ばかりが被災しており、どう考えても理不尽である。
実はボクの前・秘書も今、現地にいる。さすがに心配したが、どうやら無事らしい。彼女の場合はフラチな動機で、女優を目指しての留学。大学で演劇を専攻後、ハリウッド女優になるという幻想を抱き続け、ついに渡米を決断しよったわけだが、あっちには女優志願者が腐るほどいてるから、裏をかいてニュージーランド出身の女流監督ジェーン・カンピオンの関係者に接近したらというボクの助言を真に受け、カンピオン作品を片っ端から見たあと、本当にニュージーランドへ行ってしまいよったのである。ほんま、うかうか冗談も言えんのだ。
今、何かを買うと自動的に数%が寄付されるとういうシステムがあるが、馬券にも導入すればと思う。被災者の役に立てるんなら、今よりもっと買うぞ。今までJRAに多額の寄付をしてきたが、そっちのほうがよっぽど気分がいいのだ。
小倉の1950万馬券には驚いた。勝ち馬は9番人気だったが、自分の◎だった。しかし、それがどうした。起きたらレースが終わっていたではないか。
的中馬券は2票だったが、もしボクがそこへ1票投じていたら配当は1300万に下がる。新記録馬券をゲットして喜んでる方、ボクの寝過ごしに感謝してもらいたい。な~んて、こんなこと言い続けたまま死んでいくんだろう。
今回興味があるのは、あれを当てた人より外した人だ。1、2着がハナ差だったが、逆なら3400万馬券で、的中者は全国でただ一人。この人の近況が知りたい。あれからわずか1週間、おそらく、まだ寝込んでおられるに違いないのだ。高熱と悪夢にうなされておられるだろう。家族に当たり散らし、割れた茶碗が散乱してるかも。判定した審判の暗殺計画を立ててるかも知れんぞ。
とまあ、自分ならそうなるかもと可能性を列挙してみた。ボクをこんなネガティヴ人間にした競馬を恨むのである。
十三の第七藝術劇場という小劇場に2日続けて通った。ゴダールのフランス映画で、ちょっと貴重な作品が上映されたからである。
これでゴダール作品は44本見た。相変わらず難解で苦痛だが、なぜかこの苦痛さがたまらん。客席はボク同様、若い頃に彼の狂気に魅せられたまま抜けられなくなったオッサンがほとんどである。皆、苦痛に顔をゆがめたり寝てしまったり。そして帰りのエレベータ内で、開放感から安堵の表情に変わる。
ボクにはマゾヒスティックな資質があると思う。百万馬券が出るレースしか参戦しないと決めているため、難解なローカルのフルゲート短距離戦にばかり手を出してはことごとく玉砕し、ボロボロになりながらも、何だかすがすがしいのだ。最近は「さあ、今日も負けよかっ」と気合を入れて家を出る。病気である。
狙いが大きいと、ニアピンで20万馬券程度を獲りそこねても、ビクともしなくなるのがメリットだ。さあ、皆さんもご一緒に。マゾ馬券。
相撲界が八百長問題で大騒ぎである。これを肯定するわけではないが、八百長があるからこそ盛り上がった場所もあったわけで、それも含めて「興行」だと開き直ればと思うんだが、理事長は「過去には絶対ない」などと、また調べもしないで発言しよった。安易な人だなあ。
八百長どころか、驚いたのは消去メールがあそこまで復元できることである。これはうかうかしとれんぞ。怪しいメールをいくらコマメに消していても、サツにガサ入れでもされようもんなら一巻の終わりである。痴漢で誤認逮捕でもされたら頼りは家族だけだが、その家族に一番敵対視されるわけだ。たとえ被害者が告訴を取り下げても、嫁ハンに「いいえ、この人はやってます」と足引っ張られたりして…。
馬券の購入履歴がバレたら困る人もたくさんいるだろう。買いすぎるのも問題だが、買ってなさすぎるのはもっと問題である。「ほな、何に使ったん?」という詰問にビビらないよう、返事を用意しておこう。
嫁ハンがカンボジアから日焼けして帰ってきよった。何でカンボジアかと言うと、河村隆一のコンサートがアンコールワット前の広場で行われたからである。
前回は香港でのライブに行きよった。旅先は隆一が決めるわけで、仮にザイール川のほとりで行われれば、コンゴに行きよるわけだ。…ったく、この女の思考回路は今もって解明不能である。
お蔭でこちとら、父子家庭。しかし、高3の娘もこれ幸いと遊びほうけて、連日の出ずっぱりである。独りでカレーを温めて昼飯を食い、梅田場外で仁王立ち。家に誰もいないので帰っても仕方なく、そのままボートピアへハシゴ。またイカレて傷口を広げ、適当な奴を呼び出してヤケ酒をあおり、11時頃、さすがに娘が心配で帰宅すると、まだ帰っとらんっ。
ムカムカするので、今年も旅打ちに精を出してやるのだ。小倉に福島に函館でどうだっ。何か小さいよなあ…。嫁ハンも娘も、どこでも行けよという顔しよるし…。
性衝動をあおるとかで漫画が槍玉に挙がっているが、もっと過激にしてあおりまくったほうがいいんじゃないか。いや、正しく言えば、あおるんじゃなくて抑えるほうに機能しているのかも。彼らはバーチャルの世界で済んでしまうのかも。
よく映画ビデオを掘り出すため日本橋を歩くんだが、アニメ館みたいなところは、リュックを背負った若者たちでいつも満パイである。イケメンも結構いるのだ。せっかくの日曜日なんだが、彼らは男同士で日本橋にくり出すのである。何か不健全な気がするぞ。
一緒にせんといてよ。おっちゃんはなあ、道頓堀場外で太い勝負して、身も心もボロボロになってから日本橋に回ってるんやからな。もっと不健全てか? スマン。
全国で寄付騒動が巻き起こっている。火を点けた「伊達直人」はボクが幼い頃に親しんだアニメのキャラクターであり、犯人はボクと同世代なんだろう。裕福な奴がいるもんだ。正月競馬わずか3日間でキュウキュウ言ってるボクとは大違いである。
真似師がたくさん出現し、山下清、星飛雄馬、ウルトラマンの父、クレヨンしんちゃん、アルセーヌ・ルパンなどと名乗っているが、「伊達直人」の役柄を知らない世代なのか、意味がある名前はルパンぐらいで、やはり模倣犯は冴えない。
伊達直人を見習って、菅直人もしっかりしろと言いたい。施策も人事もひどすぎる。雇用問題が発生して労働者を保護するのはいいが、その分がもろ経営側にシワ寄せされてることぐらい、気づけよ。経営という土台があるから雇用ができるわけで、この政権が続くとえらいことになるぞ。我が社の業績を国のせいにするわけじゃないけど。
うちの文房具も誰か寄付してくれっ。せめて赤ペンだけでも。